吉田修二著 横道世之介
先日図書館に寄った時、司書さんのおすすめコーナーに置いてあったこの本「横道世之介」を、タイトルに惹かれてなんとなく借りて読んでみました。
「横道世之介」作者プロフィール
画像引用:吉田修一公式サイト
吉田修一 1968年9月14日長崎県生まれ
97年に『最後の息子』で文学界新人賞を受賞しデビュー。
「パーク・ライフ」で第127回芥川賞を受賞している芥川賞作家で、「横道世之介」でも23回柴田錬三郎賞を受賞しています。
代表作は映画化もされた「悪人」ですかね。彼の物語の根底にある優しさと、非常に読みやすい文体で私はデビュー当時から彼の作品のファンですが、説明不要の超有名作家さんですね!
吉田氏のTwitterアカウントはこちら
横道世之介のあらすじ
バブル時代の大学生「横道世之介」君とその周りの若者たちの青春ストーリーです。
誰の人生にも温かな光を灯す、青春小説の金字塔。
1980年代後半、時はバブル真っただ中。大学進学のため長崎からひとり上京した横道世之介、18歳。自動車教習所に通い、アルバイトに精を出す、いわゆる普通の大学生だが、愛すべき押しの弱さと、隠された芯の強さで、さまざまな出会いと笑いを引き寄せる。
友だちの結婚に出産、学園祭でのサンバ行進、お嬢様との恋愛、そして、カメラとの出会い・・・。そんな世之介と、周囲にいる人たちの20年後がクロスオーバーして、静かな感動が広がる長編小説。
引用:横道世之介 (文春文庫)
横道世之介の感想
以下、ネタバレあり!
面白い本は、眠くならない
何も期待せずに読み始めたんですが、面白くて通勤時間にド集中モードに入り一気に読み上げました。面白い本ってページをめくる手が止まらないですよね。逆に面白くない本って、3行読んだら寝ちゃうから一生読み終わりません。私の本棚にはそんな、10年ものの読み終わってない小説が何冊もあります。
何の前知識もなく読み始めたので、タイトルからして近代歴史小説かな?と思ったら、物語の始まりは、長崎の田舎から東京の大学に通うためにカバン一つで上京してきた男の子の話で、彼の名前が「横道世之介」でした。
読み始めてすぐにこの物語が軽快で爽やかな青春小説だと分かりました。40歳を過ぎた私が、青春小説を通勤電車で読む気分になんかならないですよ。今更大学生の青春の話なんてねぇ。
ところが、東京で始まる世之介のこれからが妙に気になって引き込まれたんですよ。これは吉田氏の描写がとにかく上手いからですね。最初の数行で、あっという間にバブル期の東京を歩く世之介のワールドにトリップしてしまいました。
いそうでいない、最高の友人
学生の身でありながら女の子を妊娠させてしまった友達と世之介。
実はゲイであることを半同居状態の友達からカミングアウトされる世之介。
年上のちょっと危ないお姉さんにほのかに恋をする世之介。
どの世之介も、とにかく魅力的なんですよ。彼はいい言葉を言うわけでもなく、相手に熱く理解を示したりするわけでもない。
掴みどころがなくてだらしがない、いまいち何を考えてるかわからないんです。だけど嘘も打算もなくて付き合いがいい。どんな時も自分の気持ちにブレない。
誰かの役に立つわけでもない世之介ですが、出会った友人たちはそんな世之介にいつの間にか惹かれていくんですが、読者の私もどんどん惹かれていきました。
だってそんな人、友達として最高じゃないですか?若い頃ならなおのこと。。。
話の中で、世之介の友人が大人になってから世之介と過ごした大学時代を思い出し、「世之介と出会った人生と出会わなかった人生だったら、出会った人は少し得している」と言うんですが、本当にその通り。この本を読んだら、少しだけ心が優しくなって少し得をします。
学生時代い思いを馳せる
全編通して読みながら世之介の青春時代を追体験して、自分の学生時代の記憶が本当に鮮やかに蘇った気がします。むしろ、グレーだった思い出も世之介仕様に都合よくアップデートされました。
中年の今と違って、若いころって真っ白なキャンバスに描かれていく絵画のように、新鮮でワクワクするような日々だったじゃないですか。
あの気持ちを少しだけ思い出せたんですよ。海馬の奥の奥、はるか遠いところに行ってしまった青春時代。。。でも、私にも確かにあったんですよー。泣いたり笑ったり恋したりした時代が!
あの頃を忘れてしまった大人の皆様にこそおすすめしたい、青春小説です。
映画化、そして続編へ
読み終わってから知ったんですが、これって2013年に映画化されてたんですね。
世之介役を高良健吾君が演じたと。。。それはぜひ見てみたい!まだ見てませんが、探してみたけどNetflixもAmazon primeもHuluでもやってないみたいなんです。
だからYoutubeで予告編をみたんですが
予告見て思ったんですけど絶対に面白いですよ。Googleの評価もすごくいいです。でも、予告編でネタバレし過ぎなのがハラハラしましたけど。まだストーリーご存知ない方は薄目で見ることをお勧めします。
そして小説の続編があることを知って、即図書館で借りてきて読みました。
期待を裏切らない読み応えでしたが、なんというか。。。結末を知ったその後のストーリーはもうドキドキしながら読むことはできませんでした。ウォーキングデッドで言うところの、シーズン7以降的な感じです。分かりにくいですかね。
でも世之介を好きになってしまったら、きっと手に取らずにはいられないと思います、続編。
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