「臨死!!江古田ちゃん」の作者として有名な漫画家、瀧波ユカリ氏の漫画「ありがとうって言えたなら」。
誰もがいつか迎える母親の死に向き合う家族の姿が赤裸々に描かれていてとても胸に刺ささりました。
瀧波ユカリ氏について
画像引用: ダ・ヴィンチニュース
瀧波 ユカリ氏は、1980年、北海道釧路市出身の漫画家。全裸の女の子が体を張って現代の都会を生き抜くシュールな4コマコメディの『臨死!!江古田ちゃん』が代表作。
東日本大震災をきっかけに、現在は夫と息子と3人で札幌市で暮しているそう。
江古田ちゃんは発売当時から話題になっていて、私も当時は江古田ちゃんとあまり変わらない年齢だったから共感できることが多くて好きだったわ。
親になってしまった今となっては江古田ちゃんが危なっかしくてハラハラしちゃうけど。
「ありがとうって言えたなら」のあらすじ
折り合いの合わなかった母に、ある日突然膵臓がんが見つかり、既に余命1年の宣告を受ける。
母は余命宣告を受けてから、実家を処分し姉の家へ引っ越し。瀧波氏には遺影を書いてほしいと頼んだり、子供3人、さらに孫もつれて最後のハワイ旅行、最後は緩和ケアへ入院。
一方瀧波氏は、母と過ごす時間はもう限られているとわかっていても、どうしても母を受け入れることができない気持ちに彼女はとても苦しみます。
さらに、母のもともと毒舌で活発な性格に加えて、抗がん剤治療による副作用や気分の浮き沈みに対応するうちに、看病をする彼女の姉も瀧波氏もボロボロになっていく。。。
最後の日々、母は、家族はどんなふうに過ごし何を思うのか。そして娘はいつ、お母さんに「ありがとう」って伝えたらいいのか。。。
ありがとうって言えたならの感想
「母親の病気と死」というすごく重いテーマだけど、江古田ちゃんと同じ線でコミカルに描かれてるからとっても読みやすかったわ。
でも私は、気軽に何度も読み直す気分にはなれない作品。
なぜなら、本当に怖いくらいリアルだから。
瀧波氏のお母さんは強烈な美女で毒舌だったらしいわ。瀧波死は、お母さんが病気で死んでいくなんて想像したこともないんじゃないかしら。
彼女の姉から病気の一報を聞いた時の感想がこんなだもの。
私の母は、美人でも毒舌でもないけど今でも本当に元気で、病気になって弱っていく姿なんて想像できないし、今は母の死なんて遠い未来の話のように感じてる。
きっと彼女だってそう思ってたはず。でも、どういう形にしても「親の死」って自分が生きてる限り必ず誰にでもふりかかってくる話なのよね。
わかってるけど、それはその時が来るまで目をそらしておきたい事実。
母は変わらない。自分の気持ちも変われない
精一杯お母さんのケアを頑張るお姉さんと瀧波氏だけど、お母さんとの関係はどうにもしっくりこない。
長年に渡って仕上がった人間関係や感情は、病気というきっかけがあったとしてもそう簡単には変わらないものなのね。
お母さんは相変わらず無茶苦茶だし、娘たちはいちいち振り回されてしまう。
瀧波氏ははっきりとは漫画に書いてないけど、現代的に言うとお母さんはいわゆる「毒親」のような感じだったんじゃないかしら。
お母さんとの間に生まれたわだかまりをどうすることも出来ないままに、弱っていく母親を見ていくのは本当に辛かったと思うわ。
そんな自分に思い悩み、瀧波氏はセラピーを受けることにした。そこで彼女は自分の心の奥にあったこんな気持ちに気がつくのよ。
ガツーン!と来たわ。この1コマ。
母と娘って、本当に上手くいってる人もいるのかもしれないけど、多くの人が大なり小なりもやもやとしたものを抱えた関係になってるんじゃないかしら。
難しいわよね。母と娘。
私には1歳年上の兄がいるんだけど、時代背景もあってなにかと兄が優遇されて私は軽んじられてるっていう負い目を感じて育ったわ。
その関係は今でも続いていて私は母のそういう考え方は全く受け入れられない。
でも娘たちは皆、母親に対してもやっとしたものがあったとしても、みんなこの「お母さんを嫌いになりたくない」って気持ちは抱えてると思う。私もそうだわ。
関係が上手く行ってなくても、心の真ん中にはいつも「お母さんを好きでいたい」自分がいるものよね。。。
瀧波氏はセラピーを受けた結果、母と距離を置いて付き合うことで対応していたわ。適度な距離って本当に大事よね!
最後に伝えたい言葉がある
病気になって弱っていく母の姿を見て、だんだん母の死を実感していく瀧波氏。
本当はお母さんに「ありがとう」って伝えたいけど、それはまるでお別れの言葉みたいで言い出せない。
伝えたいけど、伝えられない苦しさが伝わってきて、思わず涙がこぼれちゃったわ。
常々私は思ってる。よく「ぽっくりと逝けたらいい」なんて言うけど、私はそんなのは悲しすぎると思う。
最後に一言でいいから、気持ちを伝えたいし、親からの言葉も聞きたい。それを聞けるか聞けないかで逝く方の満足度も違うだろうし、なんせ残された方の人生が絶対に違うもの。
瀧波氏がついに母に「ありがとう」と言えたシーン、切なくて悲しくて胸が詰まったわ。
このページのシーンがじわじわと心にささって、私自身の母との色んなわだかまりが溶けていきそうな気がした。
とっても良い本でした。
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